伊万里湾カブトガニ繁殖地
いまりわんかぶとがにはんしょくち
概要
カブトガニは剣尾綱(けんびこう)カブトガニ目カブトガニ科に属する節足動物(せっそくどうぶつ)である。種名にカニが含まれるが甲殻類ではなく,分類学上はカニよりもクモに近い。背面は甲羅(こうら)に覆われ,尾剣(びけん)と呼ばれる特徴的な剣状の長い尾を持つ。本種を含むカブトガニ科は,約2億年前の中生代(ちゅうせいだい)・ジュラ紀(き)にヨーロッパからアジアにかけて生息したとされるメソリムルスの化石と形態が酷似しており,生きた化石とも呼ばれ,古生物学や進化生物学上貴重である。カブトガニは,かつて瀬戸内海のほぼ全域と九州北部の海岸一帯に連続して分布していたが,近年個体数が減少し分布域も縮小している。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類に選定されており,国内での絶滅が懸念されている。
指定対象区域は,佐賀県伊万里市の伊万里湾内奥部東側の海域及び海岸部である。当該区域内にはカブトガニが産卵する砂地とその幼生が生育する干潟が良好な状態で維持されており,カブトガニが安定的に繁殖していることが確認されている。また,地元保護団体により産卵地清掃や産卵観察会等の活動も盛んに行われている。指定対象区域は,学術上貴重なカブトガニが安定的に繁殖する重要な繁殖地であり,また,地域における保護意識も高いことなどから,天然記念物に指定して,その一層の保護を図るものである。