地蔵菩薩像
じぞうぼさつぞう
概要
地蔵菩薩は、釈迦如来の滅後、次に弥勒如来が現れるまでの無仏世界において、衆生の済度にあたる。六道、すなわち天・人・阿修羅(あしゅら)・畜生(ちくしょう)・餓鬼(がき)・地獄(じごく)の六種の生き物の世界のあらゆる所に赴くとされ、その行動性を表すため、飛雲に乗った立像でよく表されたが、この様に山水景観中に坐る静的な図もある。補陀落山(ふだらくせん)の観音を表す図からの連想により構成されたかとも推量される。像容は、僧形で左手に宝珠、右手に錫杖を執り、通例と変わらない。相貌や体躯は小さく引き締まって端正にまとまる。着衣の青緑系を主とする彩色と過剰気味の細緻な截金文様、また山水描写に取り入れた素朴な水墨画的手法など、宋元画の影響も見られ、鎌倉時代後期の仏画の傾向をよく示す作品である。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.316, no.169.