佐喜浜にわか
さきはまにわか
概要
にわかとは近世の大坂で生まれた即興的な寸劇であり、上方の落語・万才・喜劇に大きな影響を与えた芸能史上重要な芸能である。大阪のにわかは後に舞台芸に発展し、明治末以後急速に衰微したが、各地に伝播し民俗芸能化したにわかのいくつかは、現在もなお地元の祭礼においてその命脈を保っている。
高知県室戸市の佐喜浜にわかは、佐喜浜八幡宮の秋の祭礼に奉納されるもので、もとは地域に四つあった若衆宿【わかしゆやど】の競演であったが、昭和四十一年の四宿廃止後は浦宿【うらやど】の名称のもとに、毎年二本が演じられている。
佐喜浜にわかは、フレコミ(前口上)、シウチ(演技)、オシ・オトシ(落ち)の三つの部分で構成され、二~三人の役者、フレコミ役・拍子木・オボン持ち(プロンプター)の各一人のメンバーにより演じられる。特に重要視されるのは定型的な演技・セリフ術をもったオトシの部分で、この出来不出来がにわかの評価を左右する。
にわかは本来、その場のにわかな思いつきという即興性を身上とするが、佐喜浜では一夜漬けの稽古、再演の禁止、時事の当て込み、オボン持ちの存在等、にわか本来の精神をよく継承しており、芸能の変遷の過程を知る上で貴重である。
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