八天遺跡
はってんいせき
概要
北上盆地の東縁を流れる北上川に望む舌状台地に営まれた繩文時代の集落跡である。5次にわたる発掘調査の結果、繩文時代中期末から後期中頃までに営まれた大規模な集落跡であることが明らかになった。
台地上には住居跡や土壙が多数存在し、また東と西の両斜面には土器廃棄場とも考えられる大量の土器を出土する地点がある。土壙にはフラスコ形やビーカー形の深く掘り込まれた大形の類も多く、そのうちの2つの土壙からは耳・鼻・口形土製品が発見されており、芸能史上極めて注目されている。同種の遺品を出した遺跡は他に2遺跡あるが、発掘によってはじめて出土状態の把握されたものとしても重要である。
また、台地中央部では特殊な大形の建物跡が発見された。ほぼ13メートルの正円の住居跡で、8回以上の改築によって順次内側にせばめられている状態が観察される。おそらく集落に附属する公共的な建物と考えられるが、この種の建物を擁する集落跡は極めて稀であり、一地方における中心的な集落としての性格をうかがわせるものである。
なお、本遺跡の東南部には旧石器時代の包含層の存在も確認されており、また中央辺には平安時代の竪穴住居跡が4棟発見されている。さらに中世の溝や井戸跡がある。