田能村竹田関係資料〈/帆足家伝来〉
概要
画題の「暗香疎影」は、林逋(林和靖)の七律「山園小梅」から採ったと思われるごとく、本図は鶴を子とし、梅を妻となしたという林和靖の放鶴の故事を踏まえ、梅花咲き匂うもと、酒に酔えば心は夢裡に遊んでけがれなしという心境を絵と詩に託して描かれたもので、そのリズミカルな筆致、墨の諧調、淡い彩色にはよく彼の本領がうかがえる。香影主人は他の款識から、郷里近くの浜脇の荒金呉石であり、竹田【ちくでん】は彼のために、本図のほか「香影閣」の扁額を書し、主人をよろこばせたという。天保二年は竹田五十五歳にして晩年に当たる。