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装潢修理技術

そうこうしゅうりぎじゅつ

主情報

  • 選定年月日:19950531
  • 選定保存技術

解説

 わが国では絵画、書跡、古文書などの文化財が、千数百年から数百年の永い年月を経て、今日に伝わっている。とくにわが国特有の高温多湿の気象条件の下では、湿気、黴による腐食や虫害による損傷が起こりやすく、必ずしも恵まれた環境とはいえない。こうしたなかで、多くの文化財が今日に伝えられたのは文化財を大切にした先人達の努力に負うところが少なくないが、優れて伝統的な保存修理技術=装潢の技によるところが大きかった。この点は世界的にも類例稀なこととして、とくに近年は関係方面をはじめ各国においても注目されているところである。
 わが国伝来の書画類は四季の温湿度変化の影響を受けやすい紙や絹を主材料とするものが多いため、原状のままに伝来するものは稀で、いずれも本紙を紙、糊によって補強した巻子、掛幅、屏風、折帖などのさまざまな表具の形態に仕立てられて伝わっている。換言すれば、これら文化財は紙、糊による裏打によってのみ本体の保存が図られているといっても過言ではない。それゆえ、こうした脆弱な文化財を後世に維持、保存していくためには、五〇年~一〇〇年を周期として、本紙を支える裏打紙の打替が必要となっている。これらの修理は、表具の解体、解装から旧裏打紙の除去、繕い、裏打替から表具仕立てへの工程を要するもので、各形態の文化財が容易に解体され、新たな生命によって甦ることが常に可能な状態にあるべきことが要求されるのである。この修理にあたっては、当然のこととして伝統的な技術に裏付けられた卓越した装潢の技が必要不可欠となっている。
 以上の点を踏まえ、装潢技術を伝統的保存修理技術として選定し、積極的に保存継承を行う必要がある。