画稿より
がこうより
概要
1914年、田中恭吉は、友人の恩地孝四郎の紹介により、かねてから田中の作品に注目していた詩人萩原朔太郎から処女詩集『月に吠える』の挿絵制作を依頼されました。1917年に出版された同書は恩地が装幀を手がけ、口絵には黒い羅紗地に金色のインクの画稿をもとにした木版画が挿入されましたが、この『画稿より』がそれにあたります。空にかかった大きな三日月が放つ強烈な光の中で、腕を振り上げ、大きなステップを踏んでダンスをする人間の姿が、黒く沈んだ濃紺地に金泥で妖しく浮き上がったこの作品。画面には異様なまでの幻想性が漂い、夭折した彼の生への強い憧憬と執着が込められているかのようです。