濃茶麻地菊棕櫚文様帷子
コイチャアサジキクシュロモンヨウカタビラ
概要
この特色ある文様構成が、寛文期を中心に行なわれたことが寛文7年(1667)刊行の『御ひいながた』などによってうかがえる。また同雛形(ひながた)にはこの帷子とほぼ同文様の1図が見られ、この鋭い放射状の形象が、図の注記によって棕櫚(しゅろ)の葉と知られる。このように雛形意匠と合致する実例が伝えられているのはまことに珍しいといわなければならない。盛夏の料ながら刺繍が厚やかに用いられていて、時代の好みをうかがうことができよう。なお絵羽文様の場合、ここでは縫い目に覆せるように繍いあげているのが、また興味深い。