古今和歌集断簡 了佐切「わたのはら」
こきんわかしゅうだんかん りょうさぎれ わたのはら
概要
もと冊子本であった『古今和歌集』の断簡。『古今和歌集』巻第9の和歌3首(歌番号407から409まで)を書写する。「了佐切」の名は、古筆家の祖である古筆了佐(1572-1662)が極札をしたためたと伝えられたことによる。藤原俊成(1114-1204)の独特な鋭く変化に富んだ筆跡がよくあらわれている。
なお箱内には本品とともに、実業家で古美術品蒐集家として著名な保阪潤治(1875-1963)宛の前島密(1835-1919)書翰が2通、前島密の所有品の鑑定書が1通、前島密宛の高田早苗(1860-1938、前島密長女の夫で早稲田大学総長などを歴任)書翰が1通保管される。これらの書翰によれば、前島密が所有の古筆を鑑定してもらったところ、二条康道筆・藤原為忠筆・藤原為家筆・藤原俊成筆のものは真、冷泉為相筆・西行筆のものは贋と鑑定されたため、高田早苗を通じて、小杉榲邨・今泉雄作・紀淑雄に意見を求めるとともに、鑑定結果とその後の調査について保阪潤治に意見を求めている。本品が、前島密が所有していた俊成筆の古筆に該当するか不明だが、前島密が古筆に関心を寄せていたことを示す近代史料を付属品として有する点、非常に興味深い。