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概要

絵画 / 素描 / 昭和以降 / 日本

靉光  (1907-1946)

あいみつ

1937(昭和12)年

墨・紙

24.8×41.8

額装

 特別な手法を用いているのでもなく、形をゆがめて描いているのでもない。ただ極細の線で、対象をきわめて丹念に、細密に描きだしているだけである。しかしこの素描は、見る者に何か異様なものを見ているという感じを与える。
 ふだん何気なく見ているものが、あるとき突然気味の悪いものに思われてくることがある。ほんの少し視点をずらしたり、一つ一つのものに張り付いている名前を取り去って改めて見たりするとき、それは起こる。靉光のこの素描は、見慣れたはずのものが見慣れぬものへと変貌するこうした一瞬を思わせる。
 たとえば、同じ鷺(サギ)であっても、日本画にしばしば登場する鷺は、決して見慣れぬ存在でも、気味の悪いものでもない。ここでは、画家はほとんど触れそうなほどの距離で対象と向かい合い、息をつめてとがったくちばしやうつろな目や繊細な羽毛の質感を迫っている。その異様な緊迫感が、この見慣れぬ視覚を生み出しているのである。 (土田真紀)

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キーワード

素描 / 真紀 / 対象 /

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