鷲と駝鳥
わしとだちょう
概要
靉光の友だちだったある画家は、「靉光君の家とは近かったので、よく植物園や動物園に写生に行った。けれどもその当時、靉光は既に毛筆描きをやっていて、博物館へも熱心に古画を見に通っていた*。」と話しています。また別の画家鶴岡政男という人は、「十帖ぐらいの彼の画室には、天井からは干乾びた雉子がつる下げてあり、西日のあたる窓の中で、その骨についた羽根が、ふんわりふんわり動いていた*」と思い出しています。
友人たちの話にある頃、靉光は、毛筆と墨で、好んで鳥を描いていました。生きている鳥も死んだ鳥も、じっと見つめて写生します。すると鳥たちは、ここに描かれた駱駝や鷲のように、活き活きとした表情と動きをもちます。写真のように正確に写生するのではなく、それぞれの鳥の性格を的確に捉えるのが巧みなためです。そして、描こうとする物に画家は、魅入られていくからです。 (*『靉光』菊池芳一郎著 時の美術社 1965年)
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神奈川県立近代美術館