山水図
さんすいず
概要
夏永(かえい)は中国では定規を使って描く「界画(かいが)」の名手として知られる画家である。しかし日本では字(あざな)である明遠(めいえん)の名で知られ、このような小さな楼閣山水画を、伝統的に「夏明遠(かめいえん)」筆と鑑定してきた。ここでは日本に伝来ののち、全体に顔料がかけられている。これは青緑(せいりょく)山水の名手とする「君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)」の記述に合致させるためで、まさに日本における「夏明遠」イメージにぴったりの作品に作り変えられ、箱や鑑定書まで備えられているのである。まさに中国美術が「唐物」となり、日本の知識体系に沿って変化していった好例と言えよう。