蜀江錦幡残欠
しょっこうきんばんざんけつ
概要
法隆寺裂を代表する経錦(たてにしき―縦方向に色糸を用い、その浮き沈みで模様をあらわした錦。八世紀以降に一般化する緯錦〈ぬきにしき〉よりも古い技法)。古代中国の蜀(現在の四川省成都市)では色鮮やかな赤地の錦が特産であったと伝えられ、これにあやかり「蜀江錦」との美称がある。連珠円文の中に向かいあった獅子や鳳凰をあらわし、外側には天馬(ペガサス)や雄鹿が疾駆する。作品内側は全体にスレ跡が目立ち、これにそって周囲に針穴が巡っていることから、本来は幡(ばん―仏教儀式の場を飾り立てるのに用いられた昇り旗)に仕立てられていたと考えられる。