魚屋茶碗 銘 さわらび
ととやちゃわん めいさわらび
概要
魚屋(ととや)茶碗は、朝鮮半島で焼かれた高麗茶碗のひとつです。もとは、朝鮮の地方窯で量産された日常使いの器が、 日本の茶人の目にとまり茶の湯の席で使われるようになったものです。侘茶(わびちゃ)が大成される天正年間(1573~92)から評価を高め、さかんに輸入されるようになりました。
この茶碗は、浅く直線的にひらいたかたちの平魚屋(ひらととや)と呼ばれるもの。びわ色の生地に、青みがかった灰色の釉がかかり、そのムラが、春のかすみのような景色を作っています。
銘は、『金槐和歌集』の源実朝(みなもとのさねとも)の歌
さわらびの もえいづる春に成りぬれば のべのかすみもたなびきにけり
にちなんで、近江小室藩主小堀政峯(こぼりまさみね)(1689~1761)が、「さわらび」とつけました。この茶碗を納める箱の蓋裏には、政峯によって、この和歌が書き付けられています。小室藩の初代藩主は江戸初期の有名な茶人、小堀遠州。政峯は、今も続く遠州流の第5世でもあります。