山王坊遺跡
さんのうぼういせき
概要
津軽半島のほぼ中央部,日本海に面した十三湖(じゅうさんこ)と呼ばれる潟湖(せきこ)の北岸に位置する中世宗教遺跡である。十三湖周辺には,南北朝から室町時代にかけてこの地を支配した安藤氏に関連する遺跡が多数存在するとともに,中世的景観が色濃く残る。
遺跡は十三湖北岸,安藤氏の居館とされる福島城の北方,山王坊川が流れる沖積地の奥まった山間部の谷間に立地しており,発掘調査の結果,拝殿,渡廊(わたりろう),舞台,中門,本殿と考えられる礎石建物が一直線に並ぶ神社跡,廂(ひさし)を含めた東西7間,南北5間の南面する建物を中心にコの字状に配置された建物群から成る寺院跡といった,中世の神仏習合を示す伽藍が極めて良好な状態で保存されていることが明らかになった。また,造営にあたっては室町幕府と密接な関係にあった安藤氏が深くかかわっていたことは疑いなく,整然と配置された伽藍は南北朝から室町時代における京都との交流を具体的に示している。さらに,十三湖を中心に分布する史跡十三湊遺跡(とさみなといせき)や福島城などと一体のものとして中世的な景観を構成するなど,中世社会,文化を知る上でも重要である。