東泉寺薬師堂
とうせんじやくしどう
概要
東泉寺薬師堂は、室町時代に建てられた貴重な仏堂であり、寄棟造平入の内陣の正面に入母屋造平入の外陣(礼堂)を接続させている。薬師堂内陣は、桁行三間、梁間三間の本瓦葺の方三間堂である。外陣は近代の建築であるが、内陣は室町時代の建築であって、当初は内陣だけの仏堂であった。内陣の建築年代は、平瓦の箆書銘によって文明12年(1480)であることが分かる。
享保3年(1803)や昭和期の改造が見られるが、主要な構造は創建当初のまま残されている。柱・木鼻・台輪・組物・中備・隅木持送り・垂木などは当初材であり、室町時代の古建築としては、保存状況は極めて良好であると言える。
唐様を主体として和様を混入した建築様式をみせており、同時代の瀬戸内海地方の流行を示す。また、肘木の形状や大振りな拳鼻の使い方などに独自性が見られる。上島町の定光寺観音堂において、独特で大振りな木鼻と花肘木を用いているが、そのような独自性をもつ点で両者の作風に共通性が見られる。
東泉寺薬師堂(内陣)は、文明12年(1480)と建築年代が古い仏堂であり、瀬戸内海地方の室町時代の建築文化を示す重要な遺構として高く評価される。