竹厨子
概要
お経が納められていた竹製の厨子(ずし)です。奈良・法隆寺に伝わる古い記録『法隆寺東院資財帳』にはこの厨子について、中国唐時代の高僧、慈恩大師(じおんだいし)の記した法華経の注釈書など、20巻の書物が納められていたことが記されています。またこの厨子は聖徳太子一族の住まいの跡に夢殿を中心とする東院伽藍(とういんがらん)を建立した行信僧都(ぎょうしんそうず)が、聖徳太子のさまざまな遺品とともに奉納したものです。
厨子の正面には両開きの扉が付き、中に二段の棚が設けられています。表面は斑(まだら)な模様のある細い竹ですきまなく覆われ、同じく竹の横材でこれを押さえた上に花のような形をした鉄の鋲(びょう)を打ち付けています。葦のように細い竹は、中国南部に自生する篠竹(すずたけ)の一種と見られます。また屋根の部分は四方から寄棟風(よせむねふう)に合わせ、上部を平らに仕立てています。竹の素材感を生かしつつ、その組み方や鋲の連なりによって装飾性が生まれ、貴重なお経を納めるのにふさわしい品格を備えています。