小笠原氏城跡
井川城跡
林城跡
おがさわらししろあと
いがわじょうあと
はやしじょうあと
概要
松本平の中央部から東部に位置する,室町時代から戦国時代にかけての信濃守護小笠原氏の本拠となった城跡で,平地に築かれた井川城,山城である林城から成る。小笠原氏は,建武元年(1334)に信濃守護に任命されたが,領国統治は安定せず,常に軍事的な緊張の中に置かれていた。文安3年(1446)に勃発する小笠原一族内での家督相続争いは小笠原一族を三家に分裂させ,天文3年(1534)に府中小笠原氏により再統一されたが,天文19年(1550)には,武田(たけだ)晴(はる)信(のぶ)の侵攻により府中小笠原氏も信濃国から追われた。
こうした混乱の中,小笠原氏の居城は15世紀後半には平地の井川城から,防御性に優れた林城に移ったようであり,これは戦国期に全国的にみられる平地から山城へという領主の居城の変化の典型である。また,いずれの城跡もその保存状態は良好であり,室町時代から戦国時代に至る領主の居城の在り方を具体的に知ることができる。小笠原氏の動向を示すだけでなく,室町幕府や鎌倉府,上杉,徳川,北条といった信濃を取り巻く諸勢力の政治,軍事的な動向を知る上でも重要である。