絵師草紙模本
えしのそうしもほん
概要
朝廷から伊予に所領を拝領した一人の絵師をめぐる出来事を描いた絵巻。原本は、宮内庁三の丸尚蔵館所蔵で、鎌倉時代末期の作とされ、詞書と絵を交互に配する三段構成で、一巻仕立てである。館蔵の本資料では絵が先に、詞書が最後まとめられ、しかも詞書は第一段内容の後に第三段の後半内容、第三段の前半内容の後に第二段内容が書き継がれた二段構成にされ、錯綜が見られる。模写時の底本にすでにあった錯綜を示す痕跡である。第一段では伊予に所領を得た絵師の喜び、第二段では在地の実情を知った悲嘆、第三段では遠い伊予から近い所領に替えてもらう要望をするも梨の礫という様子が描かれ、最後にこの窮状を絵にして訴え申しますと結ぶ。ちなみに、伊予に与えられた土地とは、描かれた綸旨の文言の「伊予國」の下に「得」と推定される文字が読み取れることから、桑村郡得能保(西条市丹原町徳能)と考えられている。