久部良バリ及び久部良フリシ
くぶらばりおよびくぶらふりし
概要
我が国の最西端に位置する与那国島の北西岸には,久部良フリシと呼ばれる独特の海浜景観が展開し,そのほぼ中央に久部良バリと呼ぶ深い断層崖の亀裂が存在する。
久部良フリシは,主として砂岩から成る八重山(やえやま)層群の上面を堅い琉球石灰岩から成る琉球層群が覆う構造をもつ。海波の浸食により凹部が形成された緑色及び紫褐色の砂岩の急崖から成る風致景観は,独特かつ傑出している。その中央の久部良バリは全長約15m,幅約3.5m,深さ約7mの規模を持ち,琉球王府(中山)による人頭税(にんとうぜい)の負担にあえいだ島びとたちが,妊婦に崖を飛ばせて胎児とともに死に至らしめたとの伝承を生み,その背景を含め近世後期の与那国島における社会を考える上で深い意義を持つ。
また,海岸は,旧暦の4月に稲穂の害虫を駆除するために,虫の霊を海の彼方の理想郷・アンドゥヌチマへと送るフームヌン(穂物忌み)の儀礼の場となっており,その独特の風致景観と相俟って,与那国島の精神文化を語る上で重要な意義を持つ。
このように,久部良バリ及び久部良フリシの海浜地形は,与那国島に固有の伝承・儀礼に彩られた独特の風致景観を形成している。