大歩危小歩危
おおぼけこぼけ
概要
大歩危は,徳島県三好市の一級河川吉野川の中流にあり,河床と河岸には,関東から九州まで日本列島を縦断して分布する三波川変成岩(さんばがわへんせいがん)が典型的にみられる。三波川変成岩は一般に「三波石(さんばせき)」,徳島では「阿波(あわ)の青石(あおいし)」と呼ばれ,共に石材として著名である。三波川結晶片岩は,中生代ジュラ紀から白亜紀にかけての海洋プレートの沈み込みにより大陸側に付加され,地下深くに押し込まれ,高い圧力のもとで再結晶したものである。大歩危付近の三波川変成岩は,ドーム状の背(はい)斜(しゃ)構造(こうぞう)という褶曲(しゅうきょく)構造を示している。今回の指定対象地では,背斜構造の中心部に近い部分に原岩(げんがん)の年代(変成作用前の年代)が新しく変成の程度が弱い砂質(さしつ)片岩(へんがん)や礫質(れきしつ)片岩などが分布し,背斜構造の中心部から離れた部分には泥質(でいしつ)片岩や緑色(りょくしょく)片岩などの変成度の高い古い岩石が分布し,見かけ上新しい岩石と古い岩石の位置関係が逆転している。
大歩危の三波川変成岩は,海洋プレートの沈み込みにより付加された地層から構成されるわが国の成り立ちを知る上で,極めて重要である。