手鑑(二百九十二葉)
てかがみ(にひゃくきゅうじゅうによう)
概要
江戸幕府の御用絵師であった住吉弘貫が収集し、文久元年(1861)に一帖に仕立てた古筆手鑑で、奈良時代より江戸時代に至る古筆の断簡二九二葉を貼り込んだ作品である。聖武天皇の「大聖武」を一番とする典型的な古筆手鑑の構成になる優品で、烏丸切、東大寺切、高野切(第三種)、中院切、村雲切、戸隠切など、多くの名物切を含んだ格の高い手鑑といえる。また、表紙見返しに貼り込まれた源氏物語を主題とする扇面画は住吉如慶(土佐広道)初期の画風に通じ、注目される。
本手鑑は、伝来や作成経緯が明らかで、表裏に三百余の古筆切が貼られている大部なものであり、広く公開されたことのない貴重な手鑑である。書道史上、国文学上に価値が高い。また、見返しの扇面画は近世絵画史上にも貴重である。