紺地立浪水犀桶模様縫箔
こんじたつなみすいさいおけもようぬいはく
概要
紺繻子地に、立浪に水犀・浅く広い桶・海松模様を刺繍した縫箔である。元は紺練緯地の縫箔であったものが、生地が傷んだためか、江戸末期に模様部分のみを切り抜き、新たな紺繻子地に切付けによって再生されたものである。刺繍の一部には、改変の際の後補もあるが、構図はほぼ変わらず、元は桃山時代の遺風がある江戸初期の能装束であったと考えられる。
水犀は一角、珠甲を特徴とする中国の霊獣で、火難を避ける瑞祥とされる。本縫箔でも水を連想させる意匠とともに表されるのは、そのためであろうか。
大阪の実業家で茶道・和歌・俳諧・能楽を嗜んだ数寄者として知られる平瀬露香(1839~1908)の旧蔵品である。
恩賜京都博物館編『能衣裳』(1939年 42p)、金剛巌編『能衣装』下 復刻版(有秀堂 1979年 no.56.)に図版が掲載される。
【参考文献】田中淑江「国立能楽堂蔵「紺繻子地立浪水犀桶模様縫箔」の修理報告及び一考察」『国立能楽堂調査研究』vol.2 2008年