パルメット文隅木蓋瓦(伝和歌山県上野廃寺出土)
ぱるめっともんすみきふたがわら(でんわかやまけんうえのはいじしゅつどひん)
概要
堂塔の隅木の先端の上面と両側面および木口面(こぐちめん)を覆う箱形の瓦製品で、上面の笠板と他の3面を囲む飾板とからなる。飾板は、3面ともに扇形のパルメット文(忍冬文)に輪形を巡らしたものを主文とし、その周縁には左右対称にS字形の文様を配置している。また、両側面の飾板は、その後端部を雲形の曲線に縁取り、屈曲部などに雲文をあしらっている。
和歌山市上野廃寺(紀伊薬師寺)出土品と伝えられ、金銅風鐸(ふうたく)や古瓦なども伴出している。いずれも7世紀後半の白鳳時代の遺物であるが、この種の箱形隅木蓋瓦は類例が少なく、その文様の卓越さとともに、側面後端部の雲形文は、法隆寺金堂の雲形肘木(ひじき)などに通じて注目される。なお、上野廃寺では、昭和42年(1967)と同59年(1984)の発掘調査などで、同類の遺物の断片が発見され、この遺物が上野廃寺出土品であることが確認されている。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.281, no.14.