宇治の文化的景観
うじのぶんかてきけいかん
概要
「宇治の文化的景観」は、宇治川に代表される自然景観を骨格としながら、重層的に発展した市街地とその周辺に点在する茶園によって構成される茶業に関する独特の文化的景観である。
宇治は京都市の南に接し、古くから渡河点として、また奈良と京都を結ぶ街道の結節点として重要な機能を果たしてきた。特に宇治川左岸に発展した市街地は、格子状を基本とする構成と平等院の旧園路に沿って展開する密集した居住形態を特徴とする。発掘調査等によって確認される当時の地割は、平安時代に藤原氏が別業を配置するために行った古代末の計画性と街区の様相を留め、これらが現在の街路配置等に影響を与えることによって、宇治における歴史的な中心市街地の景観に反映されていると考えられる。
また、宇治は安土・桃山時代から近世を通じた茶文化の発展において特に中心的な役割を果たした。近世には、茶師屋敷や茶園など、宇治茶に関連する様々な要素が建造され、明治期には茶師の系譜を引く茶商をはじめ、卸や小売の店舗とともに手工業的な製茶工場が建ち並んだ。これらの建物のうち数棟は、現在も宇治市内に残る。