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紙本金地著色日月松鶴図〈/六曲屏風〉

概要

紙本金地著色日月松鶴図〈/六曲屏風〉

絵画 / 室町 / 関東 / 東京都

東京都

室町

一双

三井記念美術館 東京都中央区日本橋室町2-1-1三井本館7階

重文指定年月日:19930610
国宝指定年月日:
登録年月日:

公益財団法人三井文庫

国宝・重要文化財(美術品)

 草花の咲く水辺に日月、六羽の真名鶴【まなづる】、六株の松という吉祥的な題材を配し、背地を総金地とした花鳥図屏風である。右隻(向かって)右側が松が新芽をつけ、蒲公英【たんぽぽ】・菫【すみれ】・躑躅【つつじ】の咲く春、右隻左側から左隻右側にかけてが藪柑子【やぶこうじ】が咲き葦が伸長する夏、左隻左側が葦が枯れ始め穂を出す秋、という季節の推移が示される。なお、右隻には、かつて襖に転用されたことを示す引手跡【ひきてあと】と本紙の切り継ぎの跡がある。題材をわりあいに並列的に配置する構図、丸みを帯びた形象、輪郭線が控えめな金地濃彩の手法、金属板を貼って日月を表現する技法、細く柔らかな墨線を重ねた岩の暈取りなどから、本図はやまと絵の画法になり、また、金泥を塗って箔足を目立たなくする金地の処理などから、その制作時期は室町時代であると判断される。
 室町時代のやまと絵系屏風のうち、「四季花木図【しきかぼくず】」(重要文化財 平成三・六・二一 出光【いでみつ】美術館蔵)と本図とは、雌雄の松、藪柑子、両隻にまたがる岩といった題材を共有し、松・岩・波紋の描法も類似するので、同一の画系に属すると考えられる。ただし、「四季花木図」の非常に並列的な構成に較べて、両隻を並べたときの左右両端に松・岩・土坡を寄せて重心を作り、また、画面上端を超えて松を伸長させ、外側から枝を折り返す本図の構図は、雪舟や狩野元信【かのうもとのぶ】ら漢画系の大画面花鳥図の影響を受けて構図の整理を進めたことをうかがわせる。さらに、「四季花木図」が雲母【きら】と金銀の砂子【すなご】・切箔【きりはく】で柔らかな雲霞の表現をしているのに対し、本図が金箔押地で題材を浮き出させる金碧画であること、そして前者よりも本図の方に、岩の形態などやや形式化が認められることを考え合わせると、本図の方が制作時期が下がると思われる。その時期は確定し難いが、およそ室町時代末期、十六世紀中頃と考えられよう。
 伝土佐光信筆「松図」(東京国立博物館保管)とともに背地を総金地とする室町時代のやまと絵系屏風絵の稀少な遺例であり、また日月を伴う花鳥図であることも珍しい。次代の金碧障屏画の源流を考える上でも重要な作品といえよう。

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