能装束〈藍紅紋紗地太極図印金狩衣/〉
のうしょうぞく〈あいべにもんしゃじたいきょくずいんきんかりぎぬ〉
概要
黒川能下座大夫家に伝来した装束で、下座の大夫世襲披露の翁舞いに着用された狩衣である。表は印金で文様を表した藍および紅染の紋紗をはぎ合わせ、裏地に節絹【ふしぎぬ】を用いて袷仕立てにしている。当地で「光狩衣」と呼ばれているこの狩衣の文様は厚く盛り上がった漆の下付けに金箔を置いた印金の技法によって表されている。雲上の天宮を中心に日月星辰、瑞雲、霞、飛鶴などを配す文様は中国独自の世界創成観を図様化したものと考えられる。前身に表された龍や雲などの表現からは明時代も中頃を下らぬ時期の特色がうかがえる。明よりの舶載裂をわが国で狩衣に仕立てたもので、狩衣の形状は丈や裄が短く、襟が詰まっているなど全体に小振りで、古様を伝えている。黒川能上座の蜀江文黄緞狩衣とともに室町時代の数少ない能装束の遺例である。
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