白壁の農家
しらかべののうか
概要
広島県呉市安浦町出身の南薫造(1883-1950)は、東京美術学校を卒業した1907年、イギリスに留学しました。この作品は、渡英の翌年に写生旅行に訪れたオックスフォードシャーのモルトン村を描いたもの。どこか日本を思わせる静かな農村を気に入った南は、自然を愛した画家らしく、細やかな感性で村の情景を伝えています。「此の村の夜は実によい。丁度月は十日ばかり。露ぽい空気が身にしみ込む。白壁に月の光りが当る。壁の窓にはペールな内の光りが透いて見える。静寂である」。
やわらかな月の光に照らされた白壁や、しっとりとした大気を丁寧な筆遣いで描写。光の表現を追及した画業の特色をも示す、初期風景画の代表作です。この後、パリで印象派の作品に触れた南は、点描技法など印象派的な手法を試み、やがて「日本の印象派」の代表的画家として活躍していくことになります。