雪の日
ゆきのひ
概要
広島県呉市安浦町出身の南薫造(1883-1950)は、印象派風の光の表現と温和で親しみやすい画風により、明治末から文展、帝展等で活躍しました。この作品では、光がもたらす雪の多様な色調を、鋭敏な観察眼で表現。地面に溶け残った水気を含んだ雪の色や、家や塀が雪上に落とす変化に富んだ影の色。陽射しを直接浴びた屋根や路上には、輝くような白雪が見られます。印象派の誕生以前、人々は雪上の影を淡墨色に見ていたと書物で目にした作者は、ある雪深い村に滞在しつつ、時の恵みに感じ入ります。光の効果によって、影といえども多彩な色を示す雪が、もし白や淡墨色にしか見えないのなら、この雪景色から受ける感銘はどれほど減じてしまうだろうと思い、複雑な色が見分けられる時代に在ることを有難く感じたからでした。
光を反射して輝く雪景色を、伸びやかな筆遣いで生き生きと描いた本作からは、無限に広がる色彩に対する作者の喜びが感じられるようです。