少女
概要
76 南薫造(1883−1950) 少女 1909年
広島県生まれ。東京美術学校で岡田三郎助に学ぶ。1907年イギリスに留学、10年帰国。同年白馬会展に水彩9点を出品、白馬会会員となり、また渡欧中の作品を白樺社主催の有島壬生馬との二人展で展覧、初出品の第4回文展でも三等賞を受賞した。以後官展を中心に出品、受賞を重ねる。13年日本水彩画会創立に参加。32−43年東京美術学校教授。
庭先のテーブルでひたすら何かをかいている少女を描いたこの作品は、イギリス留学を終えパリに滞在した時期に描かれ、帰国後白樺社主催「南薫造、有島壬生馬滞欧記念絵画展」に出品された。渡欧中に多くの水彩画を残した南だったが、この《少女》も、油絵でありながら、白い地塗りが活かされ、短い素描的な筆致で淡い色が薄く重ねられているため、その印象はほとんど水彩画に近い。少女の向こう側にはわずかに草木と塀があるのみで、うつむいてかくことに専心する少女のひたむきさが、清涼な画面とあいまっていっそう清新さを引き立て、穏やかな詩情を漂わせている。