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継色紙(よしのかは)

つぎしきし

概要

継色紙(よしのかは)

つぎしきし

平安 / 関東

平安

色紙墨書・掛幅装

(第一紙)縦13.2㎝ 横26.4㎝
(第二紙)縦13.2㎝ 横26.5㎝

1幅

重文指定年月日:20040608
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

 継色紙は、『万葉集』と『古今和歌集』の所収歌から、四季、恋、賀の歌を抄写した粘葉装【でっちょうそう】冊子本の断簡で、小野道風筆と伝えられ、寸松庵【すんしょうあん】色紙(伝紀貫之)、升【ます】色紙(伝藤原行成)とともに三色紙と称される古筆切【こひつぎれ】の名品である。
 この冊子本の体裁は、素紙のほか、紫、茶、緑、藍、黄に染められた色紙料紙を贅沢に使用し、粘葉装の糊付けのない内側にのみ文字を記す内面書写の形式であった。例外はあるものの、和歌一首に対して二枚の料紙を用い、一方の料紙の半分に上の句、もう一方の料紙の半分に下の句を散【ちら】し書きにしている。優美な書風に加え、余白や行の間隔、傾きなどで見事な美的空間を作り出している。
 明治三十九年(一九〇六)までは、石川県大聖寺の前田家に一六首半の零本が伝えられていたことが確認されており、その後解体されて掛幅装や手鑑に貼り込まれている。現在、継色紙として伝えられるものの大半は、その名のとおり、二枚の料紙をそれぞれ折りのある中央で切断し、和歌を記す半葉のみを貼り継いだ状態である。
 本幅は、近時新出のもので、『古今和歌集』巻第十一、恋歌一に所収される第四七一番、紀貫之の歌を藍と薄藍の色紙に書写し、掛幅装に仕立てられている。表具は、一文字および風帯に紫地大牡丹唐草文印金、中廻に白茶地双龍雲丸文緞子、上下に濃萌葱地荒磯文緞子の時代裂を装し、軸首は牙切軸である。
 本文は、はじめに「恋一」と部立があり、次いで「よしのかは/いはなみ/たかく/ゆく水の」「はやくそ/ひとを/おもひそ/めてし」の和歌を上の句四行、下の句四行に分けて古体の草仮名にて、連綿を短く書いている。詞書と作者とを略している。恋の激情の様を、激しく流れる吉野川に喩える歌の一つである。雄渾で軽快な筆致は、格調高い平安貴族の美意識を反映している。
 継色紙はすでに一一件が重要文化財に指定されているが、本幅の保存状態は良好で、平安仮名史上の優品として、かつ本来の形状を今に伝える類例稀な遺品としてきわめて貴重である。

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