春日宮曼荼羅
かすがみやまんだら
概要
中央やや上部に、朱の鳥居と玉垣に囲まれた春日四所明神の四つの社殿を配し、その上部に四社に対応するように、四個の円相内に四所の本地仏の種子を墨書する。種子は向かって右から「モウ」「パイ」「カ」「キャ」の四字で、おのおの不空羂索観音、薬師如来、地蔵菩薩、十一面観音に該当し、それぞれは一宮以下の本地をあらわしている。四社の上方には御蓋山と、その傍らに玉垣を廻らした一社殿(水屋社とみられる)があり、下方には二社殿(若宮と三十八所をみられる)、四脚門のある結界が描かれる。また、神鹿の姿も認められる。社殿の造作や周囲の景観描写が、後世流行する春日宮曼荼羅と全く様相を異にして、全く整備されていないのは、本図が治承四年(1180)の兵火焼失以前の社景を写し、上古の春日社の情景を伝える古式の宮曼荼羅であるからという見方もある。また春日社絵図をもとに鎌倉中葉頃に新写したものとも考えられる。
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