狛犬
こまいぬ
概要
神社の社殿に置かれたとみられる一対の狛犬のうちの吽形(うんぎょう)像。伝来の詳細や、対をなしていた阿形像の所在については不明だが、像の出来映えからはいずれ名のある古社にあったものと推測される。真正面に顔を向けて蹲踞(そんきょ)する古式の狛犬で、頭上に一角をいただき、犬歯や上歯列を剥(む)き出して、唸(うな)り声をあげるかのような迫力ある表情を見せる。落ちくぼんだ眼窩(がんか)や体に密着して流れるたてがみに平安時代の風(ふう)がのこるが、皮膚内部の筋肉や骨格が浮かび上がるような現実的な表現から、鎌倉時代も早い頃の制作と思われる。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.116, no.153.