獅子(文殊菩薩像台座)
しし(もんじゅぼさつぞうだいざ)
概要
かつて背上に文殊菩薩像(もんじゅぼさつぞう)を載せた獣座としての獅子。滋賀県大津市の園城寺(おんじょうじ)の新羅善神堂(じんらぜんじんどう)伝来といわれる。新羅明神の本地は文殊菩薩であった。体軀(たいく)は群青(ぐんじょう)色、たてがみは緑青(ろくしょう)で彩り、腹部は朱を塗る。腰高ながら、足の筋肉や爪、骨格の表現は写実的である。飛び出た大きな眼、比較的単純な面構成による顔の表情、丸々とした胸など、10〜11世紀の作と考えられる奈良・薬師寺像や京都・東寺像に通ずるところがあり、本像の制作期も従来言われてきた平安末期(12世紀)をさかのぼるとみるべきだろう。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.115, no.151.