傘張り・虚無僧図
かさはり・こむそうず
概要
もと「樽屋屏風」、あるいは「池田屏風」の名で知られる和漢の人物風俗を描いた押絵貼屏風八曲一隻中の一図で、旧蔵者の岡山池田侯のもとを出て諸家に分蔵され、掛幅装に改められた。
筆者岩佐又兵衛(1578〜1650)は、摂津伊丹城主荒木村重の子といわれ、信長の攻撃による伊丹城陥落を逃れ、その後数奇な運命をたどり、世に「浮世又兵衛」と呼ばれた特異な風俗画家である。時に応じて土佐派的手法と狩野派的手法を使い分けるが、一種屈折した陰のある表現や、粘り気のある筆描形式は、その生い立ちに起因するともみなされている。
笠張翁を主題に虚無僧や子供の姿を捉えたこの図については、晩年に入った又兵衛が、寛永以降の世相や画壇の動向に順応して、しだいに穏やかな保守的画風へと復帰してゆく画風完成期の作品ともされ、安定感を増した細く流麗な筆致に、この画家のめざした和漢折衷が実を上げ、その完成度を高めていることがうかがわれる。
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