松江城天守
まつえじょうてんしゅ
概要
松江城は,松江市街の中心部,亀田山に築かれた平山城である。慶長5年(1600)に出雲・隠岐の領主となった堀尾氏が,同12年より築城を開始し,同16年にほぼ完成した。現在の天守はこの時につくられたものである。
外観は四重,内部五階,地下一階の形式で,正面の南面には玄関となる附櫓を設け,屋根はすべて本瓦葺である。軸部は長さ二階分の通し柱を多用しており,周囲に包板)を釘や鎹,帯鉄で取り付けた柱も多数見られる。部材の番付は二種類に大別され,二階以下に用いられた分銅紋に「富」の字を刻む部材は,安来市にあった富田城の部材と思われる。
松江城天守は,中国地方に唯一残る荘重雄大な四重五階の天守である。最近になって再発見された二枚の祈祷札から,慶長16年(1611)の完成が明らかとなった。
通し柱による構法などの独自の建築的特徴を有し,近世城郭最盛期を代表する建築として極めて高い価値がある。防御性を重視した中世山城から,高層化して近世都市の基軸へと進展してきた我が国の城郭文化の様態をあらわしており,深い文化史的意義がある。