蝙蝠の滝
こうもりのたき
概要
祖母山に源流を発し、別府湾に注ぐ大野川(全長約74km)の中上流部には、阿蘇火砕流堆積物から成る溶結凝灰岩によって特徴づけられる河谷の随所に、名勝地として特色ある瀑布が数多く所在する。
蝙蝠の滝は、この大野川の中流部(河口から約63km)、支流の稲葉川と合流した下流に位置し、『豊後国志』(享和3年[1803])など、近世の地誌においてもその雄大な姿が紹介され、広く知られていた。その名は両岸の崖上から見た形に蝙蝠が羽を広げた姿を擬えたものと伝えられる。溶結凝灰岩に懸かる滝の部分では柱状節理が発達した高さ約10m、幅約120mの馬蹄形状の屹立した断崖を形成し、節理系に沿う浸食によって河床に刻まれた樋状の流路を伝って「蝙蝠」の頭に当たる部分の両脇から落ちる2筋の瀑布が独特な景勝を成す。また、滝の上流側の河床には数多く発達した甌穴群の風景が見られる。
明治時代には、上流部への舟運の難所であった蝙蝠の滝付近における通舟を確保するため、大野川が大きく蛇行する地形を利用して舟路(大分県指定史跡「蝙蝠滝舟路跡」)が築かれるなど、大野川と人々の営みの関係を示すものとしても、蝙蝠の滝及びその周辺地域は貴重である。