緒方川と緒方盆地の農村景観
おがたがわとおがたぼんちののうそんけいかん
概要
豊後大野市の西部に位置する緒方盆地は、大分県南西部に広がる阿蘇火山由来の溶結凝灰岩が覆う丘陵地帯に位置する。盆地中央を蛇行する緒方川の侵食により形成された河岸段丘は、丘陵地帯にあって稀有なまとまった平地であるが、他所と同様に川面と大きな高低差があり、灌漑用水を得る努力が行われてきた。
緒方盆地では、古くは緒方川支流流域で涌水による迫田が開かれ、古代には宇佐神宮の荘園とされ、平安末期には荘司の緒方氏により低位段丘を潤す水路が開削されたとされる。近世には岡藩により中位段丘を潤す水路が整備され、藩屈指の稲作地帯となった。近代には、丘陵上に長距離水路が整備され、高位段丘と丘陵部に棚田が開かれた。
耕作面積の確保のために、岡藩が水路より高所に集落を移転させる等して形成された川、水田、水路、集落、山林が連なる土地利用が維持されている。また、水路網や石橋、磨崖仏や石風呂等、人々が時代毎の技術を用いて溶結凝灰岩を開発に生かし、文化や信仰を育んできたことを伝える要素が至る所に残される。
当該文化的景観は、大分県南西部に広がる丘陵地帯において、水路開削により稲作地帯として発展を遂げてきた農村の変遷を伝え、貴重である。