縹地枝垂柳霞模様肩衣
はなだじしだれやなぎかすみもようかたぎぬ
概要
縹地に風に吹かれる枝垂柳を白く染抜き、茶色で染表した霞が柳の上に掛かった意匠の狂言肩衣である。
枝垂柳は中国原産で奈良時代に日本に渡来し、『万葉集』にも多く詠まれている。邸内には植えないものという禁忌があり、かつては護岸のために植えられることも多かったため、近世の絵画や工芸品では水辺に描かれることが多い。
この肩衣では、霞が暗い茶色で表されているので、夜の水辺を意図しているのであろうか。風も一方向ではなく、渦巻いているうえ、裾には、一箇所だけ柳の葉が霞の上に掛かっているところもあり、勢いよく強い風に吹かれている様子が表現されている。「柳に風」の言葉を連想させる飄逸とした意匠であり、狂言装束に相応しい。胸と背に薺紋が据えられている。