日本書紀 巻第十残巻
にほんしょき かんだい10ざんかん
概要
養老4年(720)に完成した『日本書紀』30巻は、わが国最古の勅撰の国史で、いわゆる六国史の最初に当たる歴史書である。神代から持統天皇の時代までの出来事を、漢文により編年体で記している。『日本書紀』はきわめて重要視され、すぐれた写本も少なくないが、本巻が現存する最古の写本である。
これは30巻のうち巻第十の「応神天皇紀」で、首尾各1紙を欠くものの9紙を存し、応神天皇2年から41年までの記事を、端麗な楷書で記している。この中には、王仁博士の来朝などの著名な記事も収められている。仮名などの訓読点や校異などの注記はなく、書風からみて平安時代初期のものと推定される。
紙背には、空海の詩文集である『性霊集』が書写されている。こちらは書風から平安時代後期に書写されたものと考えられるが、これが『性霊集』の現存最古本である。文中には振り仮名や送り仮名が付されており、平安時代における『性霊集』の読法を精細に伝えて国語学上にも貴重である。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.305, no.123.