井戸茶碗 銘 三芳野
いどちゃわん みよしの
概要
大振りの茶碗は、引き締まった高台を持ち、工大脇にまわされた幅の広い箆目がきっぱりと立ち、わずかに丸みのある胴は口縁へと大きく開いている。胴には轆轤目が立ち、広い見込みには中心に小さな渦巻き状の茶溜りを持つ。釉は総釉で枇杷色を呈し、ところどころ厚く溜って青白みを強くしている。高台は竹節状に削られ、高台内は中心に兜巾を見せて削りまわされている。
大井戸といわれるたっぷりした姿の茶碗は、小さめの高台と、腰を高く見せる箆目に特徴があるように思われる。その姿は室町時代以来の天目、珠光茶碗、人形茶碗という展開の次に来るものとしては、まことに適しているものである。その故か、大井戸茶碗は井戸手の中でも、もっとも古格を持つものとされ、その請来も「高麗茶碗」が茶会でしばしば用いられるようになる天文年間(1532〜55)の頃ではないかとも考えられている。この茶碗も、そうした初期の高麗茶碗のひとつとして考えられる優作である。松平不昧所持と伝え、名物とされている。
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