五島神楽
ごとうかぐら
概要
五島神楽は、長崎県五島列島の各地で伝承され、地元の各神社の祭礼の折などに行われている。これらの神楽は、一間四方の畳二畳分という狭い場所の中をめぐるように舞うもので、二基の太鼓と笛、時に鉦の演奏にのせて舞われている。
五島列島は、長崎市の西方約一〇〇キロメートルにある一四〇ほどの島々で、一市一二町がある。この地域の神楽に関しては、一七世紀に長刀舞【なぎなたまい】を舞ったことや江戸時代に十二番神楽が上演された記録が残っている。かつては列島全体で神楽が伝承されたが、現在、神楽が演じられる神社は、福江【ふくえ】市、北松浦郡宇久町【うくまち】、南松浦郡の富江町【とみえちょう】、玉之浦町【たまのうらちょう】、岐宿町【きしゅくちょう】、上五島町【かみごとうちょう】、新魚目町【しんうおのめちょう】、有川町【ありかわちょう】の一市七町で確認されている。
五島神楽のうち上五島町と新魚目町を中心に伝承されている神楽は、上五島【かみごとう】神楽として昭和五十六年(一九八一)に長崎県の無形民俗文化財に指定されている。上五島神楽は、毎年、両町内の一四社の祭礼をはじめ有川町の三社の祭礼のほか、参詣人の個人的祈願の際にも希望に応じて上演されている。上五島町の青方【あおかた】神社では、旧暦一月一日の春祭り、新暦七月十六日と十七日の祇園祭、新暦十一月二日と三日の例大祭で公開されている。同社拝殿は二〇畳ほどの畳敷きで、その中央のやや本殿寄り畳二畳分の広さが板敷【いたじき】になっていてマイイタと呼ばれている。神楽は基本的にマイイタの中だけで舞われる。青方神社の秋の例大祭では、十一月二日に地区内の御輿渡御【みこしとぎょ】の後で、夜の七時ころから九時三〇分ころと翌三日の午前一一時ころから一二時ころに神楽が行われる。本殿に向かって右側に二基の太鼓を据え、それぞれ打ち手がつき、別に笛がいる。上五島神楽は三〇演目を伝承し、二日の夜は、そのうち一五、六演目が舞われる。一人舞が多いが二人、四人、五人の舞もある。手に御幣【ごへい】や鈴、扇などを持ち、狭いマイイタの中を、ぐるぐるとめぐる舞が多い。最初に場を浄める「座祓【ざはらい】」が舞われる。両手に御幣を持った舞である。このような儀式的な演目の間に、米をいれた盆を左右の手のひらで支え、盆の米がこぼれないように急速に回転する曲芸的な「折敷舞【おしきまい】」なども舞われ、最後は獅子舞で、周囲の大勢の子どもたちから大きな掛け声が掛かる。
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国指定文化財等データベース(文化庁)