二階つきバス
概要
1
石垣栄太郎(1893-1958)
lSHIGAKI,Eitaro
二階つきバス
Two-Story Bus
大正15(1926)年
出稼ぎ移民として渡米した父に呼ばれて16歳でアメリカに渡った石垣は,大恐慌の起こった1929年頃から社会主義リアリズムヘの傾斜を深めるが,この作品における彼は,まだアメリカの民衆の暮らしや都市の風物―満員の乗合バス―に,何ら特別な思い入れなしに,むしろ中立的な視線を注いでいるにすぎない。細部にとらわれない野性味のある人物描写には,彼の資質や,描かれた群集に対する彼のスタンスがうかがわれるものの,人物を無個性の量塊として類型的に捉えている点には,心なしかヨーロッパの近代絵画思潮の余燼(よじん)が感じられるのである。(T・M・)