失題 B
概要
明治末から大正期にかけて、「自画、自刻、自摺」を主張した創作版画運動の盛行とともに、詩歌と版画とを併載した同人誌の出版が流行した。
藤森静雄は、そうした同人誌の代表である『月映』に、恩地孝四郎や田中恭吉らとともに四十点近い木版画を発表している。
麦の穂のような形をモチーフにしたこの作品は、『月映』時代の作品で、今では制作当初のタイトルを知ることはできない。
暗い背景に浮かび上がる炎のようなモチーフは、まだ美術学校の学生であった青年藤森の内面で燃え続けるさまざまな人生の悩みや葛藤の象徴であるかのようだ。 (毛利伊知郎)