橙錦地燈籠雑宝文様蔵袍
だいだいにしきじとうろうざっぽうもんようぞうほう
概要
橙錦地燈籠雑宝文様蔵袍
だいだいにしきじとうろうざっぽうもんようぞうほう
制作地:チベット民族
17世紀後半~18世紀前半
絹(金糸入錦 緞子) 木綿
縦154.5 最大幅211.0
1領
チベット民族の貴族もしくは僧侶が用いた蔵袍(チュバ)。表地の金糸入りの錦は、燈籠文様を主題に、間に雑宝を散らす。この錦は、清代初期に宮廷用として官製工房で織られたものが、チュバに仕立てられたものである。 燈籠文様の錦は、北宋の頃より製されていた。燈籠文様は、旧暦1月15日の元宵節の際、建物を燈籠(提灯)で装飾することに由来する。元宵節に燈籠文様の錦による衣服を着用することは、明代には儀礼化されており、皇后と妃は燈籠文様を表した常服を、宦官は燈籠文様の補子を付けた常服を身に着けていた。これは時候の文様である他、燈籠の「燈」が、豊穣を意味する「豊登」の「登」と「dēng」で音通することから、燈籠が「五穀豊登」を暗喩する吉祥文様としての意味を持つことにもよる。現存する明代の燈籠文様錦には、燈籠から穀物の穂が垂れ、周囲を蜂が飛ぶ様子が表されている。清代に至っても、燈籠文様の錦はつくられるが、穀物文様や蜂文様は付属しないことが多い。明代の官服生地の周辺国および民間への流出は、清代と比較すると事例が少ないことから、本作は清代の製と思われる。しかし、蜂文様が付属している点、及び方形の燈籠と円形の燈籠を組み合わせる点に古様が見られる。これにより清代でも初期に織られた錦であると考えられる。