埴輪 武人
はにわ ぶじん
概要
大刀と刀子を腰に佩き、手甲をつけ、冑と肩甲で武装した男子形埴輪。胴甲は付けておらず、戦場の姿ではなく、葬儀に参列した武人の姿をあらわすものであろう。冑は横矧板鋲留衝角付冑に分類される形式で、細部まで実物を忠実に模した表現がみごとである。また、肩甲、左前に合せられた上衣、膝で締められた下衣、足元に表現された履など、身につけた服装や武装も極めて精巧に表現されていて、古墳時代の武装や服飾を物語る貴重な資料としても高く評価できる。
本作品が出土したとされる群馬県伊勢崎市天神山古墳(剛志天神山古墳)は、全長127mをはかるとされる古墳時代後期の前方後円墳である。昭和40年代までに耕作や土取りによってほぼ完全に削平され消滅したが、戦前の土取りの際に、武人・鶏・犬および猪(いずれも重要文化財)、女子、農夫、楽人などきわめて優れた内容の埴輪が出土したことで広く知られる。古墳時代後期の関東地方における古墳墳丘上の祭祀の姿を今に伝える貴重な作例のひとつとしても貴重な資料である。