仏涅槃図
ブツネハンズ
概要
二月十五日夜、沙羅双樹の下で亡くなった釈迦を描く。満月には銀を塗るが、銀は十二世紀の好みを示す。一方、月にかかる叢雲は、吉田兼好の『徒然草』に「月は隈なきをのみ見るものかは」とあるように、隠されて見られないところに余情を求める鎌倉時代の美意識が現れている。平安時代と鎌倉時代の端境期の美意識が現れた作品と言えるが、更に注目したいのはその大きさである。この小ささは、涅槃講という有志による少人数の集まりで用いられたためと思われ、このような講は十二世紀以降日本で広まった。