釈迦八相図
しゃかはっそうず
概要
釈迦八相とは一般に、仏教の始祖釈迦牟尼の一代における八つの重大事相、すなわち下天・入胎・誕生・出家・降魔・成道・転法輪・涅槃をいう。わが国においてはその八事相に限らず、詳しく釈迦一代の伝を記したものを釈迦八相と呼び、むしろこの方が普通である。古い作品の遺存するものは少ないが、全伝を一幅に描いた大福田寺本、涅槃を描く七幅の常楽寺本などがある。本館蔵本は、久遠寺所蔵の三幅と並んでもと一連の仏伝図を構成していたと想定される大作のうちの一幅である。山水の大景観のうちに出家前後の事相を中心として配しており、このことから、向って左方には出家以前の事跡をあらわした何幅かが、また右方には涅槃にいたる何幅かが存在したと考えられる。久遠寺の三幅はなお欠けるところが多いが、本幅を含む現存四幅をもってしても、全幅の規模の壮大さをしのばせる遺品である。画風には宋画の影響がみえ、聖衆来迎寺本六道絵と通じる趣がある。
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