栃木県上神主・茂原官衙遺跡出土刻書瓦
とちぎけんかみこうぬし・もばらかんがいせきしゅつどこくしょがわら
概要
上神主・茂原官衙遺跡は、古代下野国河内郡衙と考えられる。本一括はその内、8世紀後半の礎石瓦葺建物跡から出土した刻書瓦である。
その内容はほとんどが人名で、主に当時の郷名と共通する氏、および名が刻書される。最多の氏は「酒マ (※)」次いで「雀マ 」であり、「丈マ 」「大麻マ 」「白マ 」なども比較的多い。主に当時の河内郡にあった郷名と共通し、酒部郷・丈部郷・大續(大麻)郷・真壁(白髪 )郷と関連する。「神主マ 」や「雀マ」は、「上神主・下神主」「雀宮」という現在に残る地名と関係する。
同一の氏・名においても、文字遣いや筆跡が異なる刻書があり、2名から3名の書き手の存在がうかがえる。
これらは礎石瓦葺建物に関する、河内郡およびその周辺氏族の関わり方や、瓦の生産・供給の在り方をうかがい知ることができる、貴重な遺構出土の一括である。
※「部」の略字として、つくり(阝)の部分のみが使用される。これをさらに略して「マ」の字状に表現される。ここでは、形が近い片仮名のマで記載している。