寒林帰樵図
カンリンキショウズ
概要
「秋草や黄色い花が山路をおおい、林峰を距てた山に烟が立ちのぼっている。奥深い山中に老士が住んでいるが、ただ見えるのは寒々とした松の樹立ちのもとを登る童子だけである」。晩年に浄慈寺に住した元の禅僧平山処林(へいざんしょりん)の賛があり、およそ至正年間の中頃(1355)の図と知れる。かなり粗放な筆致で描かれるが、画者の感じとった趣きがよく表わされた図といえよう。宋時代の客観的な山水画からむしろ個的な、胸中の山水を写意的に表現しようとする方向への変化がみられる。